本事件は、コンビニ・フランチャイズ契約の解釈論のみならず、長年培われてきたコンビニ・フランチャイズシステムというビジネス・モデルそれ自体の在り方にも一石を投じる、重大な問題を含む事件であると言えます。当事務所では、本事件の社会的意義に鑑み、これを広く公表すべき事件であると考え、ここに公開するものです。
この事件は、平成4年にサークルKサンクス本部(契約当時はサンクス)とコンビニのフランチャイズ加盟店契約を結んだ原告が、(1)契約上の根拠がないにもかかわらず、本部に過大なチャージ金額を取られていること、(2)本部が商品仕入れに関して行っている代行決済の内容を加盟店に開示せず、実際には仕入商品が原告に納品された時点においては本部は原告に代わり商品仕入代金を決済しておらず、原告の商品仕入先(ベンダー)に対する代金支払債務を消滅させていないにもかかわらず、これを納品時点で既に現金決済勘定(いわゆるオープンアカウント)上、貸方に負債計上していること、(3)原告は契約上、オープンアカウントの貸方に残高が存在するときは年9%の利息を負担させられているのに対し、本部の原告に対する負債となるオープンアカウントの借り方に残高があってもこれに利息を付さないとされていることは公序良俗に反し無効であるとして、現在に至るまで過大に取られてきたチャージ金合計額の返還と、チャージ金額算定における売上原価の計算方法、及びオープンアカウントの負債計上方法を是正することなどを求めているものです。
この訴訟で取り上げている問題点は大きく3つあります。
サンクス本部と原告である加盟店との間における契約書では、加盟店が本部に支払うこととされている「チャージ」(又はロイヤリティ)について、「売上総利益」に所定のチャージ率を乗じて算出するとしか書かれていません。この点、企業会計原則等の公正な会計基準によれば、「売上総利益」は以下の計算式で算定されています。
これに対し、本部の計算式は以下のようになっています。
これらをまとめると、

ここにいう「不良品等」とは、弁当などの売れ残りや期限切れとなり廃棄処分してしまった商品のことをいい、「棚卸差異」とは、万引きなどの理由で陳列商品の数量に差異が出た場合のその差異のことをいい、これらを併せて「ロス」、そして本部がこれにチャージ率をかけた金額を「ロス・チャージ」と呼んでいます。
本部側の計算式を見ると、企業会計原則に従って算出される売上総利益よりも、ロスの分だけチャージ金額が高くなることが分かります。しかし、そもそもこれらのロスは、小売業を営む上ではいわば不可避的に生ずるものであり、どれだけ加盟店が努力したところで、ゼロに抑えることは不可能です。だからこそ企業会計原則では、先程の計算式のように、これらのロスも含めて全て売上原価と扱って、売上総利益を算出するものとされています。にもかかわらず、本部はこれをロス・チャージの形で、しかも契約書上何の根拠もなく加盟店側に負担させているのです。
このように、本部は、ロスにもチャージ率をかけることによって、現実の売上成績の如何に関わらず多大な利益を確保している一方で、加盟店に対し、「指導」という形で仕入れを推奨し、結果的にロスの発生を助長させるという構造が出来上がり、これがコンビニ・フランチャイズシステムの特徴の1つとして組み込まれてしまっているのです。
原告の場合、平成5年1月から平成18年4月までの約13年間で、5850万円もの金額をチャージとして余分に取られていましたが、本部側の「ロスにチャージはかかっていない」との説明を信じ込まされてきたため、長期間に渡りこれだけの金額を余計に取られていたことに気づくことができませんでした。
契約上、「商品の販売価格は、加盟店がみずからの判断で決定するものとする」と規定されており、加盟店で必要があると考えた場合に販売価格を値下げ(これは自店値下げと呼ばれている)することができることになっています。ところが実際には、本部からの「指導」と称して値下げをさせないようにしたり、実際に加盟店が自店値下げを敢行しても、(1)の計算式で示したとおり、値下げ分に含まれる原価相当額(自店値下原価と呼ばれている)を売上原価から控除してチャージ金額を算出することにより、結果的にその値下げ分を加盟店側に負担させています。つまり、加盟店に販売価格決定権があるというのは、まさに画に描いた餅となっているのです。
契約上、本部が加盟店に代わって商品仕入代金をベンダーに支払う方法(これを代行決済システムと呼んでいる)が採られていますが、実際に本部がベンダーに支払った時期やその金額は加盟店には全く明らかにされていません。特に決済時期に関しては、コンビニの商品のような大量仕入取引では、通常は掛での仕入れであり、決済時期は1か月や2か月先とされますから、オープンアカウント上、加盟店が仕入れた時点で本部による代行決済がなされたことになっているのは通常の取引からすると明らかに不自然といえます。したがって、本部が実際にベンダーに支払った仕入代金よりも高い金額が、本部に対する加盟店の負債としてオープンアカウントの貸方に計上されたり、本部がベンダーに代行決済を行う前に、加盟店が本部に仕入代金相当額を負債として計上されることによって、本部に対する利息を余分に支払わされているという重大な問題があります。
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コンビニ・フランチャイズシステムに関するパンフレットや契約書などでは、加盟店は「独立事業者」と謳われています。しかし、これまで述べたように、本件でもフランチャイズ契約によって本部が加盟店を縛り付けているという実態が浮き彫りとなり、独立事業者という言葉のイメージからはおよそかけ離れた経営を余儀なくされています。商品の仕入れ量などは、全て本部の指導によって行われ、これに対し加盟店側の意向は反映されない一方、「在庫品の適正な維持・管理」の名の下に、膨大なロスが生じても本部がチャージを掛けることにより、ロス発生リスクを一方的に加盟店に負担させていること自体、本部が加盟店を従属的な地位に置いていることの表れであるといえます。
この訴訟では、これまで他のコンビニ訴訟において取り上げられてきた「ロス・チャージ問題」のみならず、本部と加盟店との間に横たわる「本質的不平等」というコンビニ・フランチャイズシステムの内在する構造的な問題に光を当てることによって、加盟店に真の意味での「独立事業者性」を取り戻すことを目的としています。
コンビニは、もはや日本の生活文化の1つと言っても過言ではないほど、私たちの生活に深く根付いています。だからこそ、このコンビニ・フランチャイズ問題は、単に本部と加盟店との間の問題のみならず、過剰仕入により大量発生する廃棄弁当などの環境問題といった社会全体の問題として取り組むべき時期が来ていると考えます。したがって、当事務所としては、これまで司法の場で問題とされてきた、フランチャイズ契約をめぐる解釈論にとどまらず、1つのビジネスモデルとしてのコンビニ・フランチャイズシステムの抱える不合理性を広く社会に訴えかけ、問題提起していく活動を展開していきたいと考えております。そのためには、全国のコンビニ加盟店主に呼びかけてNPO法人などの団体を結成して情報交換や研究会を行うなどして、現状のフランチャイズ・システムの構造的な問題点を浮き彫りにすることにより、社会に対し政策提言を行い、各フランチャイズ本部に対し、是正を求めていきたいと考えております。
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